圧倒的なすがすがしさ
白い浄衣で腰に短刀と「死出紐」をつるし、笠の紐に一文銭が六つ。
死出の旅への用意ができています。
やめるなら自害するか、首をくくるかを選べといういでたち。
笠をかぶれるのは400日目から。
それまでは手に持って歩きます。
早朝2時の出発なので提灯も持ちますが、照明としてはあまり役立たないといいます。
そのうち足が道の凹凸まで覚えてしまいます。
飛ぶように歩いて「白鷺」とか「峰の天狗」とか呼ばれるようになります。
なんでそんなに歩くのか。
これはたぶん、愚問というものでしょう。
二人の大阿闇梨と別々に会う機会がありました。
どちらの場合も、阿闇梨さんが同席しているとき、席を外しているとき、何人かの修行僧が部屋に出入りしました。
彼らはまぎれもなく現代の若者ですが、廊下にひざまづき、頭は敷居につくほど。
ほんのちょっとしたシーンをかいま見ただけでひとつの答は出ました。
行者の本尊は不動明王。
平安に始まる回峰行者の拠点は無動寺谷の明王堂。
ここは師に無条件で服従する社会だといいます。
ふつうなら、これこそ疑問を感じたくなりますが、そんなものを超えたすがすがしさに圧倒されました。
この辺りは丹後 旅館からは少し遠いですが、足を伸ばしてみる価値はあります。